「公正・公平な裁判を求める有識者の会」緊急声明
3月4日、東京高等裁判所(三木素子裁判長)において宗教法人世界平和統一家庭連合に対する解散命令が下され、ただちに清算が始まりました。
解散命令は、単なる法執行である以上に、宗教教団の社会的信用に対する根底的な否定です。約十万人の信徒の方々の人生は、アイデンティティの最も核心的な信仰において、その尊厳を否定される事になります。
また、解散命令によって、教団の職員1933名とその扶養家族2441名、合計4374名が生計の手段を奪われます。
教団施設を始め、全財産が差し押さえられましたが、これらの内実は信者による献金、寄付です。信者一人一人の献金や土地建物の寄付は、憲法の保障する財産権に該当します。その強制的な押収には、教団及び信徒の極めて重大な犯罪行為が根拠とされねばならないのではないでしょうか。
今回同様、著しい反社会性を理由とした宗教法人への解散命令としては、オウム真理教に対するものが挙げられます。一連のオウム真理教事件では実に29名が死亡し(殺人28名、逮捕監禁致死1名)、負傷者は6000名に及びます。教団内でも5名が殺害され、死者・行方不明者は30名を超えています。その結果、教祖麻原彰晃以下13名が死刑、5名の無期懲役判決が確定しています。
それとは到底比較すべくもなく、家庭連合はそもそも刑事事件を起こしてさえいません。
そして、地裁、高裁ともに、解散命令という社会的な死刑に該当する苛烈な判断に相応する犯罪行為を、全く認定できていません。
我々は、昨年3月25日、地裁決定が出た折にも、それがいかに不当であるかについて声明を発出しています。声明では、その決定が以下の諸点において、法の公正を著しく毀損している事を指摘しました。
① 献金開始が平均32年前という過去の民事裁判を解散の根拠としている事。
② 違法な献金は直近11年間ゼロなのに、証拠に基づかない想定を根拠に被害の継続性を認めている事(証拠裁判主義違反)。
③ 政府提出の証拠文書に改竄ねつ造の事実があるのに、これを黙認した事。
さらに根本的な問題として、宗教法人に対する政府の解散請求は非訟事件とされ、非公開だという点が挙げられます。教団への社会的な死を宣告する法の執行が完全非公開である事に、我々は強い危惧の念を抱きます。独裁国家の秘密裁判と何ら変わらないものと言わざるを得ないからです。
ところが、東京高裁の解散決定の根拠とする解散理由は、更に非合理なものでした。
第一に、高裁決定は全体的な論旨として、家庭連合の教義に踏み込んで主観的な判断を重ね、その上で教義を有力な解散理由の一つとしています。そのように国家が宗教的な教義の良し悪しを判断する事は、政教分離の原則に反し、近代国家において許されることではありません。
第二に、地裁が2009年の教団によるコンプライアンス宣言前の遠い過去の民事訴訟を根拠に解散命令を下したのに対して、高裁は、解散命令の主たる根拠をコンプライアンス宣言後の「不法行為」に置いています。
ところが、高裁によれば、「不法行為として成立したもの」は4名、損害額1868万1600円にすぎず、「不法行為の成立可能性が否定できない」とされたものが138名、9億1545万6469円と、金額にして全体の95.6%を占めています。
「成立可能性が否定できない」とは何事でしょうか。何らの具体的な証拠も示さずに「成立可能性が否定できない」などと言い始めれば、可能性の否定できない事など世に殆どなくなります。要するに、高裁は、不法行為の成立が証明できぬ事案を根拠に解散命令を決定したのです。
両裁判所の決定は、「はじめに解散ありき」という至上命令の上に無理を重ねたものです。もしその延長上に来る最高裁決定がなされた場合、それは法治国家、自由社会の根幹を打ち砕く致命的なトリガーとなりかねない事を、我々は強く危惧します。
多くの方々には、この言い方は大袈裟に響くでしょう。だからこそ我々は訴えたいのです。
最高裁は、決定の前に、今一歩、踏みとどまってほしい。
なぜなら、国民の殆どは、本件の事実関係も、地裁、高裁の決定根拠の非合理も、全く知らないからです。
今回の解散命令で問われるべきは、家庭連合が良い宗教か、悪い宗教かではありません。家庭連合が宗教法人法の定める解散命令の基準である「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」か否かです。
二度に渡る司法判断は、教団の「違法性」を全く立証できていない。
問題の核心は、違法性が立証できていないのに、社会的な死を宣告する――そんな事が許されていいのかという一点にあります。
これは一宗教法人たる家庭連合に留まる事案では決してない。もし最高裁でこれが判例となったなら、今後、誰がいつ同じ目に合うかの歯止めが効かなくなります。
それほど最高裁の判例は重い。
最後に何よりもその重大性を確認し、我々の声明と致します。
2026年3月26日
